チャイコフスキー: バレエ「白鳥の湖」 ~アドヴェンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ
チャイコフスキー: バレエ「白鳥の湖」 ~アドヴェンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ
すべてのバレエの中で、もっとも有名なうちの1つに入るのが確実な「白鳥の湖」。これまで、さまざまな解釈と演出がほどこされてきたが、注目したいのは、このマシュー・ボーン監督・振付によるヴァージョンだ。
「白鳥を男性が踊る」というアイディアそのものがまず斬新だが、普段われわれが目にする「白鳥の湖」との違いは、ただそれだけにとどまらない。通常のプロダクションだと、王妃は飾り物のような存在。しかし、この作品においては白鳥、王子とともに主要な役割を務める。もっとはっきり言うと、彼らの間の三角関係がストーリーをひっぱる。王子は母親を恋愛の対象と見ている。そして、男性であり動物でもある白鳥に誘惑されると、その魅力にもひかれていく。一方、白鳥は王子を自分のものにする手段としてなのか、あるいは本心からなのか、王妃にも近づく。王妃は、軍人たちと戯れるシーン(第1幕)でもほのめかされたように、恋の遊びには積極的なほうだから、むしろ自分からその誘いに乗っていく。悩み、苦しむのは王子という構図だ。
振り付けはクラシック・バレエ、モダン、ショー・ダンスなどを組み合わせた現代的なもの。白鳥を演じるアダム・クーパーが妖しい魅力を振りまいている。時代設定は定かでないが、アッパー・クラスのファッションは1950年代風、社会の規範の外にいる男女のファッションは1960年代風。秘密クラブのシーンをはじめ、随所にゲイ・カルチャーからの影響がみられる。(松本泰樹)
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