パンズ・ラビリンス DVD-BOX
子どもが主人公のファンタジー映画となると、ある程度、パターン化されてしまうが、この『パンズ・ラビリンス』は違う! 少女が目にする幻想かと思われる世界と、1944年、内戦下のスペインという状況が見事にミックスされ、摩訶不思議でありながらリアルで切実なストーリーが完成されたのだ。異才ギレルモ・デル・トロ監督によるオリジナル脚本。独裁者フランコに心酔する大尉と母が再婚することになり、オフェリアは大尉の駐屯地である山奥へやって来る。途中の山道で奇妙な昆虫と出会ったことをきっかけに、彼女は現実とは思えない体験をすることになる。
手のひらに目玉がある怪人、うごめく根菜のような生きもの、巨大カエルが吐き出す粘着系の物質など、他のどんな映画でもお目にかかれないビジュアルは、デル・トロの真骨頂。CGも使われているが、あくまでもアナログ感が重視され、クリーチャーによっては特殊メイクや着ぐるみが効果的になっている。ファンタジーにおける「リアル」は、じつは少し歪んで頼りないものであることを、デル・トロは証明しているようだ。少女の目線から見た世界がどこまで現実なのかは観客に委ねられるが、大尉らにまつわる残虐描写は生々しいほどに現実的。キャストの演技もすばらしく、オフェリア役、イバナ・バケロのナチュラルで瑞々しい表情には驚嘆するしかない。(斉藤博昭)
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ファンタジーと残酷な現実の狭間
スマップの稲垣吾郎が今年一番の映画と激賞していたので見に行ったが、予想していたファンタジー映画というジャンルを大きく超える重い映画だった。
舞台は第二次戦時中のスペインで、政府とレジスタンスが激しく争う山奥の村が舞台だ。主人公の少女オフェリアは母がその村の守備隊長の大尉の後妻となったため、母と共に村におもむく。オフェリアは実は地下の王国の王女の生まれ変わりのようで、妖精に導かれるまま迷路に誘われ、地下王国に戻るため幾つかの試練を果たすことになる。
このように記すとオフェリアのファンタジー世界における冒険物語のように聞こえるが、実際はオフェリアが実際に生きている現実社会における政府軍とレジスタンスの争い、特にオフェリアの義理の父親の大尉の冷酷さと残虐さと、レジスタンスに抵抗する村人の勇気が描かれ、見終わってみると現実社会の描写の方が印象に残った。
目を背けたくなるような残酷なシーンも多く、見ていて心地よい映画とは言えないが、主人公の少女オフェリアの純真と無垢さと、それに対比される現実の酷さとその中で気高く生きる人間の勇気が、美しくも妖しい画像を通してずしっと胸に迫る作品だ。
夢より現実の方が重い
過酷な現実の中にいる子どもは、悪夢の世界へと向かう。
子どもの夢と大人の現実が関わり合うこともあるが、それぞれ自分の世界で別々に生きている。
少女の幻想より、大人たちの現実の方が存在感が大きい。悪夢の住人より、現実の義父の方が怪物的だ。
現実寄りの分だけ、夢で迎える「ハッピーエンド」は夢にしか見えない。
少女は自分の考えで行動しているというより、大人の思惑で動かされている。現実のみならず夢の中でも。ああしろこうしろと指図するパンと、大人たちとにどれほどの違いがあるのか。
大人のメルヘンだということで、大人の都合でできた話なのだろう。
悲しいファンタジー
パンズ・ラビリンスの予告編、チラシを見る限り、ちょっとグロテスクな怪物が出てきて、あとは妖精〜☆と云う映画なんだろうな。と思ってワクワクしながら観に行ったら、とんでもない!!
ラストシーンでは感動の涙ではなく、悲しみの涙が止まりませんでした。
ファンタジーの怪物よりも現実のが残酷です。
余りにも痛いシーンが有って、そこは★、−1で…。
ペイルマンの気持ち悪さがとにかく良かった!!
ファンタジーの可能性を押し広げた成功作
ファンタジーにまったく新しい世界観を切り開いた傑作です。わたしのスペイン内戦のイメージは、オーウェルの「カタロニア賛歌」からでした。オーウェルはこの戦争の比較的明るい部分に焦点をあて、「これは時たま死者の出るオペラだ」とまで言い切っています。しかしいくら何でも戦争なのに、そんなはずはないと思いながら、他の本を読むことまではしませんでした。そしてこの映画に出会ったのです。
この映画はファンタジーを装いながら、スペイン内戦の暗い影の部分を描こうとしています。まずそのことに驚かされました。ファンタジーだと信じて見に来た観客の中には、ショックで途中退場した人もいました。上映が終わっても、しばらくは誰も立ち上がろうともしませんでした。わたしも含めて見た人はそれほどの衝撃を受けたのです。
ひとつだけ違和感を覚えたのは、宮崎アニメが目に心地よい映像表現を追及しているのに比べると、この映画はファンタジーの部分でさえ、目に不愉快な表現を追求しているかのようでした。でもおそらくそれは、過酷な現実とファンタジー部分との落差を小さくして、一続きの話としてまとめあげようとする監督の狙いなのではないかと思いました。ともかく映画ファンなら是非一度は見るべきです。但し、小さいお子さんに見せてはいけません。
怖ろしくも美しい
ファンタジーと言うと、「魔術が横溢する超非現実的世界に迷い込んだ少年少女が、困難に直面しながらも、友人たちのと力を合わせ悪を滅ぼす」というストーリーが定番。それはいいんだけど、そればかりというのもなんだかなぁと思う部分があったのですが、本作は、それらとは一線を隔した一筋縄ではいかない妙味がありますね。
少女オフェリアを通して、現実と幻想が綾なされる構成。牧羊神が招く地下の迷宮は少女が現実から逃れるために創った世界ともとらえることはできますが、オフェリアの試練が徐々に現実のサバイバルとリンクし、そこに込められた寓意が鮮明となっていきます。
オフェリアは、現実でも幻想でも過酷な試練を受けることになるわけで、現実と幻想の境目が限りなく曖昧になっていて、それゆえに浮かび上がる残酷さが、哀しく痛ましい。
独特の美学をもった画面作りも素晴らしい。昆虫のような妖精、パン牧神の造形、血と泥に塗られた迷宮、掌に眼を持つ肥大化した胎児のような異形の者、人面植物の根、裂かれた大尉の口等々、挙げればキリがないほどえ、アカデミー賞では撮影賞、美術賞、メイキャップ賞の3冠受賞はナットクです。
ダークなファンタジーながら、そこには平和への思いが渦巻いています。特にラストショットにかけて、少女が最後の試練に立ち向かうシーンへの流れは秀逸。現実と幻想がせめぎ合い残酷さと救いが拮抗する。オフェリアは、勇気と優しさを示した聖女のような存在。
ある意味、ハッピーエンドなのかもしれませんが強烈な大人の苦味が残ります。怖ろしく、美しい映画でした。
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