ヴェルディ:ドン=カルロ*歌劇
ヴェルディのオペラの中で、《ドン・カルロ》ほど暗く重く深い美しさをもつ作品はない。全盛期のカラヤンが心血を注いだ《ドン・カルロ》は、その方向性を極限まで推し進めている。純血風イタリア・オペラを好む人には、違和感を覚える向きもあるかもしれないが、やはり帝王カラヤンならではの美学が貫かれた、儀式のような完成度は、有無を言わさぬ説得力がある。“イタオペが苦手”という人には、こうした重い作品こそ、最高の入門となるのではないか。何よりもベルリン・フィルによる“音の壁”が、ワーグナーに匹敵する規模のこのオペラをさらに巨大なものとしている。
演出もカラヤン。豪華で闇の部分の多い舞台は、苦悩に満ちたこのオペラにふさわしい。主役6人も歌・演技とも最高の力を出し切っている。特にエボリ公女役のバルツァの捨て身の情熱が抜群で、舞台をよく引き締めている。フィリッポ2世役のフルラネットは国王の孤独で弱い面を打ち出している。ロドリーゴ役のカプッチッリは火のように熱い。こうした演技はシラーの原作戯曲に基づいた解釈で、緻密に練られたものである。ドン・カルロ役のカレーラスは一途で純情な王子にぴったり、エリザベッタ役のダミーコも美しくけなげな感じがよく出ている。宗教裁判長役のサルミネンは充実したバスで冷酷な権力者の恐怖感をよく体現している。音はやや残響が多く、空間の広がりを感じさせる。ある程度大きなヴォリュームで、怒涛の迫力を浴びるように聴きたいディスクだ。画質は最新のものにはやや劣るが、雰囲気はよく伝わってくる。イタリア語4幕版、1986年ザルツブルク復活祭音楽祭でのライヴ収録。(林田直樹)
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