シークレット ライヴ・イン・NY (DTS5.1ch)

シークレット ライヴ・イン・NY (DTS5.1ch)

シークレット ライヴ・イン・NY (DTS5.1ch)

MTVが台頭してきたころ、ひっそりと姿を消したユニットがあった。1970年代に登場し、ポップ音楽界の破壊分子として存在したスティーリー・ダン。頑固なまでに普遍的な音楽を持った彼らが19年の時を経て復活した。アルバム発売の後、この長編ビデオのプロジェクトが発足。コンサートとドキュメンタリーの両方を収めたこの作品は、かつての名曲と新曲がどちらも楽しめる一品だ。90年代前半にウォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲンが再会。その2人が集めたバンドが新曲で素晴らしい演奏をしている。例によって、彼らの楽曲には、無垢なアレンジの中に極限まで完ぺきを目指した芸術的な美学が存在している。その芸術性を自ら暴くかのように、そこに観衆のざわめきやインタビューを入れ、その完成型を崩す。

根っからのスティーリー・ダンのファン(私自身を含む)から見ると、ベッカーとフェイゲンは、もう随分昔にロックから離れ、50年代のジャズやR&Bの世界に傾倒されている。彼らの歌詞は暗く重くなり、独特の世界観に満ちあふれ、若者文化や自らをほめたたえるロックの世界とは一線を画していることは間違いない。フェイゲンは、短く刈り込んだ髪にいかめしいヒゲをたくわえた容ぼうに、色つきのメガネをかけた男。よく見える糸切り歯は青白く、さしずめ吸血鬼風レイ・チャールズといったところだ。キーボードをかき鳴らし、甘くささやくように危険な歌詞を口ずさむ。一方、銀縁のメガネをかけたパートナーは、クラヴィコードの代わりにギターを握り締めたフランツ・シューベルトのよう。インタビューで聞くことのできる彼の素っ気なく皮肉めいた言葉には、学者風のイメージを強くするだろう。2人で書かれた楽曲でもベッカーの色が目立っているように、歌詞の中に見られる二人称の世界観から想像するだけでは、イメージを誤って読み取ることになるかもしれない。

彼らを代表するのは、キャリアの後半に作られたアルバムに収められた楽曲。メンバーが少なくなり、ジャズのアクセントをつけた音をスタジオの中で実験的に作り出していた時代だ。新しく発表されたアルバム『トゥ・アゲインスト・ネイチャー』には、優美、誘惑、ドラッグなどあらゆるものを取り込んだ曲が収録されている。細微に至るまで気を配ってレコーディングおよびミックスされたパフォーマンス。映像の編集も素晴らしいが、監督のアール・セバスチャンを殴りたいほど傾いたカメラアングルもある。さて、それでは次の作品まで、また新たな19年間を待つとしようか。(Sam Sutherland, Amazon.com)

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