ジミ・ヘンドリックス スペシャル・エディション
聖人伝に名を残すべきアーティストが今までに存在したとしたら、それはジミ・ヘンドリックスだろう。本作はジョー・ボイド監督による1973年の“公認”トリビュート映画で、ジミ伝説を世に広めるには充分な内容。ドキュメンタリー作品らしかぬことではあるが、画面に登場するさまざまな語り手の意見よりも、選りすぐりのコンサート映像のほうがジミの偉大さをストレートに伝えている。ピート・タウンゼント、ミック・ジャガー、ルー・リード、ジャーメイン・グリアといった面々が担ぎ出され、ジミと過ごした日々を情緒たっぷりに語っているものの、目と耳で確認するジミの演奏ほど雄弁なものはない。テレビ番組『Ready Steady Go!』のザラついたモノクロ映像の中で演奏される「Hey Joe」、有名な記録映像でつづられるモンタレーやウッドストック(そう、あの「The Star-Spangled Banner」)やワイト島でのフェスティバル出演、12弦アコースティック・ギターを使っての「Hear My Train a' Comin'」などを通して、音楽家ジミがみずから語りかけてくるのだ。
しかし、この作品から音楽家ジミの圧倒的な輝きは伝わってきても、人間ジミの横顔はそれほど見えてこない。たとえば、ジミの死をめぐる状況にはほとんど触れられずじまいだ(当時の恋人モニカ・ダンネマンが数秒間だけ姿を見せる程度)。ジミ本人のインタビュー映像のほか、父親、軍隊時代の友人たち、元恋人たち(ジミをニューヨークで“発見”し、イングランドに連れてきたリサ・キースも含まれる)、それにミュージシャン仲間たちによる少々一貫性のないコメントが挿入されているが、音楽自体が持つ説得力にはかなわない。いちばん気の利いたコメントを寄せたのは、リトル・リチャードだ。彼は持ち前のクレイジーさを発揮して、ジミの音楽をこう評している――「何度かあったことなんだが、聴いているうちに、俺の足が勝手にブーツの中に吸い込まれていくんだよ」。(Mark Walker, Amazon.co.uk)
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